ポイント1
茶道具類を保管するための箱があると査定がしやすい道具類になります。
茶道具は、本体を保管している箱に作家自身による署名や捺印がなされていることがあります。これは、作品を制作するにあたって作家自身のものであることを保証するものになります。この箱と本体に相違がなければ、評価額の付けやすい茶道具になります。陶芸作品の場合は、作品の下部や底部に作家が制作したものであるとわかる銘を入れることがあります。作品に刻まれた銘は、作家が決めている特定の箇所に入っていることが多いようなので、この銘が刻まれたところから、その作品の制作時期を推測することもできるようです。これらの銘は、通称、掻き銘(ひっかきめい)・描き銘(えがきめい)・印銘(いんめい)と呼ばれていますが、陶器の生地を引っ掻いて入れたり、筆で描いたり、判子を押し付けて銘を入れているようです。この作家本人の銘が入っている本体と箱が一致していれば、評価額が付けやすくなります。
- 掻き銘(ひっかきめい):生地を引っ掻いて銘を入れる
- 描き銘(えがきめい):筆で銘を入れる
- 印銘(いんめい):判子を押し付けて銘を入れる
ポイント2
文部科学大臣が指定している重要無形文化財の保持者として認定を受けている陶芸家は、評価できやすい作品になります。
伝統的な卓越した技能を有している陶芸家のなかで、文化財保護法の無形文化財として認定されている個人は、芸術性のたかい作品を生み出すことができることから、自国の伝統的な文化芸術を向上させて、継承者を育成しておられます。そのため、通称「人間国宝」と呼ばれていますが、現在、活躍されている陶芸家及び物故作家によるものは、これらの重要無形文化財に認定されていれば、評価できる作品になります。
人間国宝になっている陶芸家は、無形文化財に指定されている工芸分野の技術を継承しており、芸術性のたかい作品を制作することができる各個人が、文科省の無形文化財の認定を受けている人物を指します。
ポイント3
その作品の評価額を左右する付属品の箱がついているものは、箱なしよりも評価しやすい作品になります。
陶芸作品においては、作者が造り上げた作品を保管するための箱をあつらえるので、作品の形状にあった大きさの木箱になります。このような箱は、作家自身の捺印署名が確認することができるものなので、その作品が誰によって制作されたものなのか特定することができます。これらは、近代の作品によくみられますが、古い時代の作品は、経年の劣化で箱が破損していたり、墨書きが読み取れないことがあります。そのため歴史のある作品は、陶芸に精通している識者が作品の真贋を判別して、新たにあつらえた箱を作成したのち、その作品を保管することがあります。この箱は、識箱(しきばこ)と呼ばれているもので、作品の美術的な評価は、陶磁器に見識のある識者の判断に委ねられます。あるいは、近代の陶芸作品で箱が紛失していることがありますが、そのような作品は、共箱がなく中身のみになるので、現時点で評価額を付けるのは、難しくなります。
また、作品を保管する箱を適当な書付のあるものに入れ換えている場合があります。作品の外径に一致していない箱は、高さがあっていなかったり、無駄な隙間があるため箱と中身が別物の可能性があります。とくに近代の陶磁器の場合は、作者の箱の有無が評価額を左右するので、その作品に箱が付いていることを確認してください。
- 共箱:その作品が作者自身のものであると保証できる箱
- 識箱:その作品が誰によって造られたものなのか保証できる箱
- 合箱:その作品がまったく別物の箱に入っているもの
ポイント4
一点ものの作家自身による陶芸作品は、美術品としての評価が付けやすいものになります。
どのような磁器でも、作者自身の手描き(染付)による作品や職人による絵付けは、一点ものなので評価額が付けやすいのですが、印判磁器(いんぱんじき)と呼ばれる普及品のものは、評価が難しいものになります。近代の陶磁器は、比較的に印判技法を使用するれば安価に仕上げることができるようです。これらの絵柄を転写する技法は、中国の景徳鎮窯で開発されてから、近代の陶芸に普及しているようです。しかし、転写の技法から生み出された磁器製の陶器は、手描きよりも数多く生産できたようなので、大衆文化に磁器が普及するきっかけになりました。明治期になると窯業の生産は、専門の絵付け職人が一点ずつ制作する方法と印刷による絵付けが盛んにおこなわれていきました。とくに印刷絵付けされた日用品の陶磁器は、その時代に即応できる生産性が求められたことから、磁器に転写する印刷技術は進歩していったようです。
【印刷技法】
- こんにゃく印判
- 型紙摺絵(かたがみすりえ)
- 銅板転写
- ステンシル紙摺吹墨(かみずりふきすみ)
- ゴム判絵付け
- 石版印刷
- スクリーン印刷
- イングレーズ
- タコ印刷
- 墨弾き
- 写真印刷
ポイント5
茶道具のなかでも、宗匠の極め書きがある道具類は、茶人に愛用されているため、工芸作品としての価値が高いものになります。
茶人好みの茶道具は、茶事の席で扱われるときに、そのときの趣向にあわせて亭主が道具を選定するようです。そのため優品の茶道具は、宗匠自ら、それらの道具に銘を付けて、茶人たちに愛用されているようです。銘のある茶道具は、その優れた出来栄えを兼ね備えていることから、茶人たちから尊称されている道具であるといえます。それらの道具類の銘の由来は、その作品の姿形や景色から想起される古歌や情感を、そのまま銘としていることもあるようなので、その茶人の美的感性が投影されている道具だと思われます。これらの銘ありの茶道具は、歴代の宗匠による花押が箱に書付されていますので、これらの在判をもとに名物茶器として格付けされているようです。
時代の変遷によって、茶陶の捉え方も変化しているようで、室町期の東山文化を築いた足利義政は、歴代の将軍が所蔵してきた工芸品と自身で収集した文物を精査して、至宝の数々を収蔵品として保管してきたようですが、室町幕府の終焉が近づくにつれて、貴重な所蔵品は四散していくことになります。このなかに品質が良く由緒のある優れた茶器類が含まれていました。この時期に収蔵されていたものを総称して、東山御物と呼ばれています。このなかの茶器類は、優れた名品ということで大名物と分類されているようです。戦国期の乱世が終結していくと、芸能の分野で閑寂な風趣を好む茶人たちが、茶の湯の一様式を確立していきました。これらの時期に活躍した茶人は、侘数奇と称されることから、簡素な道具と茶を飲む空間から茶の湯の本質に迫っていったようです。この桃山文化が花開いた時代の茶道具は、千利休、津田宗及、山上宗二の茶人によって、侘び茶を体現することができる道具を選定していったようです。これらの茶道具は、たんに「名物」と呼ばれているようです。
また、武家茶の伝統を継承している遠州流では、流祖・小堀遠州によって茶道具の位付がなされました。これは、「中興名物」と呼ばれている道具類になり、遠州流に所蔵されていた道具を、三代の小堀宗實が「遠州蔵帳」として集録されました。あるいは、松江藩主七代目の松平不昧公は、散逸傾向にあった茶道具を蒐集しながら、茶道具の目録を「雲州蔵帳」に編纂していきました。これは、茶道具の格付けを五部に分類しており、宝物、大名物、中興名物、名物並、名物上からなります。さらに、茶器の名物図録を十八巻にまとめ上げた「古今名物類聚」を著述しており、不昧公は、美術工芸に造詣が深かったことが伺えます。
このように茶道具の位付は、各時代の識者によって、異なりますが、その目録に記載されている道具類のなかには、伝来や来歴がわかっているものがあるので、評価が付けやすいと思われます。それらの道具類に宗匠の書付があった場合は、名品の可能性がたかいかもしれません。
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